奥秩父主脈(雁坂峠から東半分)


2023年4月19日(水)~20日(木)
今年に入ってから何度かトレランをやってきて、奥多摩エリアの低山を走り回ってきましたが、春になって暖かくなってきたので、もうちょっと高い山で、まだ登ったことのない山に行きたいと思うようになりました。

自分が一人で公共交通機関で行けるエリアとなると、奥秩父あたりが行きやすいので、奥秩父でまだ登ってない笠取山、唐松尾山、飛竜山あたりを登ろうと思い、行き方を調べてみましたが、どの山も日帰りで行くのはなかなか大変そう。

そんな折に、ちょうど一泊で山に行ける機会があったので、一泊二日で全部登ってしまおうと思い、久しぶりに一人でテントを担いで縦走することにしました。

前から一度ULハイクみたいなことをやってみたいと思っていたので、持っている装備の中で軽くてコンパクトなものを集めて、メルカリで安く買ったサロモンのファストパッキング用のザックに詰め込みました。
ULハイクとファストパッキングの違いはよく分かりませんが、何となくファストパッキングの方がトレラン寄りの感じがします。

ちなみに今回用意した装備は、
テント:モンベル ライトツェルト、設営用のストック2本とインナーポールとペグ
シュラフ:モンベルの化繊シュラフの5番
マット:サーマレスト プロライトのXSサイズ
クッカー:エバニュー チタンマグポット500ストーブセット、25gの固形燃料×3
あとレインウェア上下と防寒着と帽子、ヘッデン×2、トイレットペーパー、モバイルバッテリー、三脚、膝用のプレカットテーピング、着替えと食料。

ボトルに水を入れてパックに荷物を入れてみたら、ギリギリで入りきらなかったので、着替えは持って行かないことにして、水の量を1リットルだけにして、なんとかパックに納まりました。
コース上で水を補給できる場所が豊富にあるようだったので、持ち歩く水の量を減らしましたが、このときの判断を後で後悔することになります。

パッキングした後で重量を計ったら、水を入れた状態で6.7kgでした。



朝6時に家を出て電車に乗り、山梨市駅からバスに乗って、10時過ぎにスタート地点の道の駅みとみに到着。

最近ちょっと奥秩父に関する本を読んで、峠というものに若干興味を持ち始めたところなので、今回の縦走は雁坂峠への峠道を登るところからスタートすることにしました。



出発してからしばらくの間は舗装路でしたが、40分ぐらい歩いたところから登山道になりました。



沢沿いの道からやがて九十九折の急登になり、出発から2時間ぐらい登ったところでようやく雁坂峠が見えてきました。



登ってきた沢筋の道を振り返ると、道の駅みとみがあった出合の部分があんなに遠く、既に大分歩いてきた感じがします。



雁坂峠は日本三大峠の1つらしく、なんと日本書紀にも記されているほど古くからある峠だそうです。
1998年に雁坂トンネルが開通するまでは、ここまで歩いてきた登山道が国道140号に指定されていたらしいですが、この看板が作られた当時はまだここが国道140号だったようです。

クルマでの移動が当たり前となった現代では想像することも難しいですが、昔は多くの人が単純に反対側の集落に移動するためにこの道を歩いて峠を越えていたのでしょうか。



ここからは見晴らしの良い縦走路をひた走ります。



少し進んだところに、「見返り雁坂」というビュースポットを示す看板があったので振り返ってみると、確かに雁坂嶺がとても良い感じに見えました。



まずは最初のピークの水晶山を目指します。
この辺りは奥秩父らしいイメージの苔が綺麗な原生林という感じで、日陰にはまだ雪が少し残ってました。



意外とすぐに水晶山に到着。



さらに20分ぐらいで古礼山を通過。
南側の展望が開けていて景色の良いところでした。



古礼山から雁峠までは気持ちのいい笹っ原が続きます。



雁峠から眺める笠取山。
こんなに見事な三角錐の山はなかなかありません。



笠取山に向かう途中で、朽ち果てた謎の機械がありました。
かつてここで何が行われていたのでしょうか。



笠取山の写真で必ず見る山頂までの急登。
実際に登ってみると見た目よりも遥かに急な感じがしました。



苦労して急登を登った分、山頂からの絶景は格別です。



笠取山から黒槐の頭に続く稜線は、地図には登山道が書いてありませんが、しっかりした道がありました。
水の残量が少なくなってきたので、一旦稜線から下って水干に行き、水を補給することにします。



水干(みずひ)に到着。
水干というのは「沢の行き止まり」を指す言葉だそうで、ここは多摩川の水干にあたる場所だそうです。

この辺りは住所で言ったら完全に山梨県ですが、多摩川の源流の水道水源林として、東京都水道局が管理しているらしいです。



そんな多摩川の最初の一滴を汲んでいこうと思いましたが、全く水が湧き出ておらず、涸れてました。
窪みに溜まっている水がありましたが、さすがにこれを飲む気にはなれませんでした。

まさか多摩川の最初の一滴が涸れているなんてことは想像もしていなかったので、ここで水を補給できなかったことがとてもショックでした。
手元に残っている水はほんの少しで、あと一口か二口飲んだら完全に無くなります。

この時点で時刻は15時を少し過ぎており、幕営予定地の将監小屋には17時過ぎの到着になる予定ですが、そこまで水無しで行かねばならないことになります。

そもそもここの水場が涸れているのに、将監小屋まで行けば確実に水があるのか心配になってきました。
将監小屋の今年度の営業はちょうど明日からなので、今日はまだ営業開始してません。
小屋の営業が開始してなくても水場はちゃんと使えるのか、事前に調べてなかったのですが、ここに来て急に不安を感じ始めました。

ちなみに、帰宅してから調べてみたら、この場所はいつも大体こんな感じみたいで、ここから湧き出た水はすぐに伏流水になり、もう少し下ったところに水を汲める場所があるようです。



もし将監小屋にも水がなかったらどうしよう…
そう考えながらトボトボ歩いていると、どこかから水が流れる音が聞こえてきました。

砂漠で道に迷った人がオアシスの幻を見るように、もしかしたら幻聴が聞こえているのかもしれないと思い、目を閉じて心を落ち着け、耳を澄ませてみましたが、間違いなく水が流れる音でした。

心を躍らせて音のする方に歩いて行くと、登山道の脇に小さな沢が流れていて、無事にそこで水を補給することができました。

よかった~、助かった~と思い、そのまま真っすぐ道を歩いて行きましたが、しばらくして異変に気が付きました。
地図では登山道は黒槐の頭を巻くようになっていると書いてありましたが、巻くどころかどんどん稜線から離れていき、気が付いたら大分高度を下げていたのです。

地図を確認して、水干から戻ってくるときに分岐で間違ったことに気付きましたが、気付いたときには、もう分岐のところから15分ぐらい歩いてきたところでした。

今から分岐まで戻ったら30分以上ロスすることになりますが、元々17時過ぎに将監小屋に着く予定で進んでいたので、これ以上遅れるのは結構マズイことになります。
時間的にも余裕がないし、体力的にも結構疲れてきていたので、唐松尾山の山頂へ行くことを諦めることにしました。
このまま今の道を歩き続けても将監小屋に着くので、真っすぐ将監小屋を目指します。



ちなみに間違って入ったこの道は、元は東京都水道局の水源巡視路として作られた道で、仕事用の道なので山頂へは向かわずに山腹をトラバースするような道になっています。

事前にまっさんから聞いて、ここにはそういう道があるということは知ってましたが、話を聞いたときは、そんなつまらない道を一体誰が歩くんだいと思っていました。
まさかいきなり自分がその道を歩くことになるとは思いませんでしたが、こうなった以上は割り切って、100年以上も昔から東京都水道局の人達が歩いてきたというこの仕事道を、当時の働く人達に思いを馳せながら歩いてみることにします。

沢筋のところはところどころ崩落していて、倒木が道を塞いでいるところもありました。



ちょうど17時頃に将監小屋に到着。
後はテントを張って一休みしたいところですが、水場の様子を確認するまでは安心できません。



しっかり水が出ていて、ホッと一安心。
これで今夜は暖かい食事をとることができます。

テント場には誰も居らず貸し切りだったので、最上段の景色の良いところにツェルトを設営。
疲労のせいか頭が痛かったので、ツェルトの設営が終わってからシュラフに入って横になっていたら、そのまま眠ってしまいました。

2時間ぐらい眠ってしまい、ツェルトの外を誰かが歩く音で目が覚めました。
もうすっかり暗くなっていたので、こんな時間に一体誰だと思ってちょっと怖かったですが、しばらくして静かになってから外を見てみたら、テントが1張り増えてました。



ちなみに今回の燃料は、家にあった110のガス缶が残量が半端なものしかなかったので、ダイソーで買った固形燃料を試してみることにしました。

25gの固形燃料1つで22分~25分燃焼するらしく、400mlのお湯を沸かすのに10分ぐらいかかるというのを事前に調べていたので、アルファ米用のお湯を沸かすのに1つと、スープやコーヒー用のお湯を沸かすのに1つ、翌朝用に1つで、固形燃料を3つ持ってきていました。

まず400mlのお湯を沸かしてアルファ米2パックにお湯を注ぎ、その時点で固形燃料はまだ半分ぐらい残っていたので、続けて2回目のお湯を沸かし始めます。
そのまま15分経ってアルファ米が食べられるようになり、2回目のお湯も沸いたところでちょうど火が消えたので、フリーズドライのカレーとユッケジャンスープを作ってご飯を食べました。
食後にコーヒーを飲もうと思ってましたが、コーヒーの為だけにもう1つ固形燃料を使うのは勿体ない気がして、コーヒーは我慢。

やっぱり途中で火を消すことができないというのは不便ですが、お湯を沸かすだけだったら充分使えるので、荷物を小さくしたいときは全然アリだと思います。



2日目の朝。
予定では3時半ぐらいに起きて5時には出発しようと考えてましたが、思っていたよりも寒くてなかなかシュラフから出られず、起きるのが大分遅くなってしまいました。
今回、ダウンパンツを持ってこようか悩んで、結局持ってこなかったので、寝るときは下半身は薄手の長ズボンとレインウェアのパンツを履いて寝ましたが、シュラフに入っても下半身が寒くてなかなか熟睡できず、やっぱり持って来ればよかったと後悔。

6時頃、ツェルトの外を誰かが歩く音で目が覚めて、また静かになってから外の様子を見てみたら、もう1張りあったテントが無くなってました。

朝も固形燃料でお湯を沸かしてスープとコーヒーを飲んで、ツェルトを撤収して7時半頃に出発。
結局予定よりも2時間半も出発が遅れてしまいました。



2日目の最初の目的地は竜喰山。
この辺りの登山道も元は東京都水道局の水源巡視路として使われていた道のようで、登山道は竜喰山と大常木山の山頂を通ってません。
まっさんから聞いた話だと稜線にも普通に道はあって歩けるようなので、まずは将監峠から竜喰山の山頂を目指して、笹原の中の薄い踏み跡を辿って登っていきます。



途中の露岩から、登ってきた道を振り返ると、木々の間に将監小屋の屋根が見えます。
昨日も一日良い天気でしたが、この日も快晴で富士山までクッキリ。



8時10分、竜喰山の山頂を通過。



次の大常木山の山頂付近は岩場だらけで、どこが山頂なのかよく分からない感じでした。
山頂のところは北側の展望が開けていて、ここまであまり見えなかった北側の景色が見れました。

手前の見えるピークの左が東仙波、右がカバアノ頭で、奥に見える平べったい山が和名倉山です。



大常木山を過ぎると、正面に飛竜山が見えてきました。
なかなか立派な姿の山で、登り返しが大変そうです。

ちょっとハゲ岩に寄り道していきたいので、直登はせずに飛竜権現の方へ向かいます。



ハゲ岩の位置がよく分からなかったのですが、ヤマケイオンラインの地図にハゲ岩の場所が書いてあったので、上の画像のハゲ岩の点の辺りを歩いてハゲ岩を探しました。
しかし、どう見てもハゲ岩がありそうな感じではなかったので、登山道に戻って飛竜権現の方へ歩いて行くと、登山道から離れてハゲ岩の方へと向かうところに立派な道標がありました。
この地図のハゲ岩の位置は間違いで、飛竜権現の少し西のところにあります。



無事にハゲ岩に到着して、ここで景色を堪能しながら一休み。
ここが今回の行程中で一番景色が開けている場所でした。



西側を見ると、昨日から歩いてきた縦走路が一望できます。

真ん中の小高い山が唐松尾山で、こうして見ると唐松尾山は一際高くて存在感があり、今回山頂に行けなかったことが悔やまれます。
笠取山は西側から見るとすごく特徴的な姿をしてましたが、こっち側から見るとどこが笠取山なのかも分かりません。



飛竜山の山頂。
最初は気が付かずに山頂を通過してしまい、いつの間にか下り始めてしまったので、慌てて引き返して山頂を探しました。
地形図で見るとここが山頂のはずなのに、どこを探しても山頂標識が見つからなくて、しばらくこの辺りをうろうろしましたが、結局山頂標識は見つかりませんでした。
このピンクテープが巻いてある気のところが一番高いので、多分ここが飛竜山の山頂です。



と思っていたら、少し離れたところにちゃんとした山頂標識がありました。
地形図で見ると、確かに山頂の少し東の2069mの地点に三角点の表示がありますが、さっきの木のところが2077mで、そっちの方が高いみたいです。
本当の山頂はどっちなのかよく分かりません。



飛竜山から雲取山までは、1時間ちょっとぐらいで行けるかと思ってましたが、意外と遠くて、全然雲取山に着きません。
飛竜山を出発してから1時間ちょっと歩いたところで、ようやく遠くの方に雲取山の山頂が見えてきました。



飛竜山から2時間弱で雲取山に到着。
山頂直下の最後の登りがなかなか大変でした。
ここからは飛竜山がかっこいい感じに見えます。

飛竜山だけなら日帰りでも行けそうなので、いつか飛竜山から左の方に延びる尾根も歩いてみたいです。



雲取山の山頂からは、石尾根を歩いて奥多摩駅へ向かいます。



また水が無くなってきたので、七ツ石の水場に寄って水を補給。
1リットルしか水を持てないと、意外とすぐに残り少なくなってきてしまい、完全に無くなるのが怖くて最後の100mlぐらいは結局飲めないので、やっぱり長く歩くときは2リットルぐらい持つようにした方がいいなと思いました。



もう結構疲れていたので下りは全部ピークを巻くつもりでいましたが、高丸山のところの巻き道が通行止めになっていたので、仕方なく巻かずに登り、かなり大変でした。
その後に見えてきた鷹ノ巣山がすごく大きく見えて、この山を登って下りるのは無理だと思い、この後のピークは全て巻きました。

脚力が残っていたら気持ちよく走れそうな道が続いていましたが、もう力が残ってなくてとても走るどころではありません。

前に石尾根を登りで歩いたときは、確か5時間ぐらいで登れたと思っていたので、下りなら3~4時間ぐらいで下れるだろうと思いましたが、脚がかなり疲れていたこともあって、思っていたよりも大分時間がかかりました。



雲取山の山頂を出発してから4時間20分ぐらい歩いて、17時過ぎに登山口に到着。
そこからさらに30分ぐらい歩いて18時前に奥多摩駅に着きました。

7時半に出発したので、ちょうど10時間ぐらいの行動になり、すっかり疲労困憊。
でもずっと歩きたいと思っていた奥秩父主脈を良い天気のときに歩けて良かったです。
今回は東側の半分を歩いたので、今度はいつか西側の半分を歩きたいですが、登り損ねた唐松尾山も登りたいし、和名倉山にも登りたいし、飛竜山も天平尾根から登りたいし、雁坂峠に登る秩父側の道も歩いてみたい。
また登りたい山がたくさん増えてしまいました。




今回のルート


1日目
10:18 道の駅みとみ
↓ 2時間12分
12:30 雁坂峠
↓ 30分
13:00 水晶山
↓ 20分
13:20 古礼山
↓ 44分
14:04 雁峠
↓ 36分
14:40 笠取山
↓ 27分
15:07 水干
↓ 1時間56分
17:03 将監小屋

2日目
7:27 将監小屋
↓ 43分
8:10 竜喰山
↓ 38分
8:48 大常木山
↓ 1時間16分
10:04~10:21 ハゲ岩
↓ 17分
10:38 飛竜山
↓ 2時間5分
12:43~12:55 雲取山
↓ 4時間51分
17:46 奥多摩駅
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