南沢大滝


2023年3月14日(火)
いとしゅーさんとのアイスクライミング合宿2日目。
1日目はアイスキャンディでみっちり練習したので、2日目のこの日は南沢大滝の登攀に挑戦します。

1日目の夜には、いとしゅーさんのマットがパンクするというちょっとしたアクシデントがあったものの、なんとか2人とも無事に睡眠をとって朝を迎えることができました。

のんびり朝ごはんを食べてテントを撤収し、7時半ぐらいに赤岳鉱泉を出発。



この日は天気は良かったですが気温は低く、歩き始めてすぐに手が冷えてしまったので、寒いとき用のグローブに使っているBDのソロイストに付け替えました。
グローブを交換している間にいとしゅーさんと大分距離が空いたので、行者小屋までの道は1人で黙々と雪を踏んで歩きましたが、天気の良い朝の冬山を1人で歩くのが、なんだかすごく楽しく感じて、こういうゆるい気分で雪山トレッキングするのもいいなぁと思いました。

30分ちょっと歩いたところで行者小屋に到着。
よく晴れていて阿弥陀岳や赤岳、横岳がすごく綺麗に見えます。



横岳の方を見ると、大同心や小同心もよく見えます。
大同心はやっぱり大きくてかっこいいです。
冬に登るのは難しそうなので、とりあえず無雪期でもいいから1回登ってみたいと思います。



行者小屋から南沢大滝までの道も、昨日降った新雪が積もっていて、キラキラしてすごく綺麗でした。



景色があまりにも綺麗で、まるで女子のように「きれーい!」「すごーい!」を連発してはしゃいで写真を撮りまくるおじさん2人。



そして南沢大滝に到着。
この日だけ参加のchimney師匠も合流して、まず僕がリードで登攀します。

この時期の南沢大滝は幅が広く、いくつものラインが登れるようですが、左側の穴の右の窪んでいるところが、最もよく登られているラインだそうなので、そこを登ってみることにしました。

穴のところまでは傾斜が緩いので簡単に登れますが、そこから先はバーティカル。
この写真で見るよりも、実際に登ると傾斜が立っている感じがして、見た目よりもバーティカル部分が長い感じがします。

登っている途中で、寒さで両手の指の感覚がほとんどなくなってしまったので、一旦左の穴のところに逃げ込んで指を暖めます。
すると指に血流が戻り、すさまじい激痛。
この感じは以前にも一度経験したことがあります。
何年か前、まーしーとMATSUに連れられて厳冬期の旭岳東稜を登ったとき、核心部の五段の宮の一段目をフォローで登った後で、冷え切った指に血流が戻り、激痛でしばらく動けなくなったことがありましたが、あのときと同じ感じです。

寒いときにクライミングするとこうなるものなのかなと思いましたが、ものすごく痛いので、登っている途中でレストしているときにこの痛みがきたら、とても登るどころではなくなってしまう気がします。

痛みが落ち着いてから、いよいよ最後のバーティカル部分を登り始めます。
昨日のアイスキャンディでの練習の成果もあり、登ることに集中しているうちは結構スイスイ登っていけます。
しかし登り続けるうちにアイススクリューが足の下ぐらいになってきたので、次のスクリューを打とうとしましたが、それまでの傾斜が緩いところとは全然違って、スクリューが打てません。
なんとか右手を放せる体勢を作って、スクリューを打てそうな箇所を探し、スクリューの先端を氷に当てて押し込みますが、まず手を放したらスクリューを落としてしまいそうで、なかなか放せません。
何回かトライしてやっと手を放せるようになっても、そこから何度かスクリューを持ち直して押し込むというのがすごく大変で、そうこうしているうちに左手もだんだん疲れてきて、こいつはヤバいという気持ちになってきます。

もうそうなるとスクリューを打つどころの騒ぎではなく、急いで右のアックスを適当なところにしっかり打ち込み、ためらうことなくフィフィを使ってアックステンションをかけました。
アックステンションをかけてから両手を使ってスクリューを打ち、ロープをクリップして安堵の溜息。

1回こうなってしまうと、その後はもう気合いが続かず、一応頑張って登りながらスクリューを打とうと試みましたが、結局1度も上手くできず、2回ぐらいアックステンションをかけてスクリューを打ちました。
僕も簡単な氷瀑ならリードで登れるようになってきていたので、もうちょっと何とかできると思っていたのですが、バーティカルアイスでスクリューを打つのがこんなに難しいものだとは思いませんでした。

やがて両腕が完全にパンプしてしまい、もうテンションをかけて休んでも登れなくなってしまったので、泣く泣くスクリューを残置して敗退しました。



その後はいとしゅーさんに選手交代して最後まで登ってもらい、トップロープをセットしてもらいました。

結局リードでトライしたのは最初の1回だけなので、今回は残念ながら南沢大滝を完登することはできませんでしたが、今度はちゃんとスクリューを打つ練習もして、来シーズンはこの滝の完登を目標にしたいと思います。



だんだん人が増えてきて、僕らの他に2パーティが登ってました。
トップロープをセットしてからは、僕らは真ん中のちょっと窪んでいるラインを登って練習。
真ん中のラインだと、さっきの左のラインよりもバーティカル部分が長く、途中でレストしながら上を見上げると、てっぺんが遥かに遠く感じて、トップロープでも心が折れそうになりますが、chimney師匠にアドバイスをもらいながら、言われた通りに登ることに集中すると、不思議とスイスイ登ることができます。

そしてなんとかノーテンでトップアウトしましたが、上に着いたときはまた指の感覚がすっかり無くなっていて、アックスを持つこともできませんでした。
アックスをギアラックに掛けてロワーダウンで降りましたが、その間にまた激痛が襲ってきて、歯を食いしばって痛みに耐えました。
登る度にこの痛みに耐えないとならないのは、なかなかしんどいです。

最後に同じラインをもう1回トップロープで登りました。
もう腕もかなり疲れていたので、ノーテンでは登れないかなと思っていましたが、最初に登ったときよりもかなり楽に登れて、途中でこまめにレストも入れながら登ったので、今度は指が悴むこともなく登ることができました。
これまではアックスを打った後、必ずアイゼンの前爪を蹴り込んで立っていましたが、氷の形状によっては蹴り込まずに普通にスタンスとして前爪で立っていいというアドバイスをもらったのが大きかったです。
そんなの言われるまでもない当たり前のことのようですが、今までは必ず蹴り込むものだと思って100%蹴ってました。

やっぱりただ漠然と登るのではなく、上手な人から教わりながら登った方が、当たり前だけど早く上達できます。
何事にも先達はあらまほしきことなり、ということを実感した一日でした。



僕らは合宿の2日目ということもあり、3本登ったところでもう疲れたので早めに撤収。
南沢大滝から美濃戸までの道はガッチガチに凍っていてツルツルでした。

今日はchimney師匠にアイスの登り方を教えてもらって、結構上達した感じがしますが、多分次にアイスクライミングに行くのは次の冬が来てからになると思うので、今日教わったことを覚えていられるか心配です。
とりあえずメモだけはしっかり残しておきたいと思います。


教わったことのメモ
・アックスは基本的には身体の真上に打つべし
・Aの形を保つよう、アックスを打ったら足の位置を整えるべし
・身体が伸びたままだと距離を出せないので、懐を広くとって、足をなるべく高く上げて引き付けて次のアックスを打つべし
(ハンドジャムバチ効きのクラックで距離を出すときのようなイメージ)
・真上ではなく横の方にアックスを打った場合は、残す方のアックスを頂点にAの形を作ってからもう片方のアックスを抜くべし
・両手が左右に離れたときは、一旦その真ん中に足を持ってくるべし
・次に大きく動けるように足の位置を決めるべし
・疲れてアックスが刺さらなくなってきたら、短く持ってコンパクトに振るべし
・乗っ越しのときはできるだけ奥に両方のアックスを打ち、少しずつ手を上げながらダガーポジションにするべし


今回のルート


7:28 赤岳鉱泉
↓ 35分
8:03~8:12 行者小屋
↓ 1時間8分
9:16~14:45 南沢大滝
↓ 50分
15:35 美濃戸口
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