甲武信ヶ岳


2018年1月29日(月)〜1月30日(火)
雪山の経験を積むのに、久しぶりに一人でどこか歩きに行こうと思い、
奥秩父の甲武信ヶ岳に行ってきました。

徳ちゃん新道から登りますが、スタート地点からの山頂までの標高差は1374m、登りの標準コースタイムはなんと6時間10分。
経験したことがないぐらいの長い登りなので、テント泊装備を担いで登るのはちょっと心配です。

もう一つ心配なのは、今日は比較的気温が高いのですが、明日の朝方はかなり冷え込む予報で、
テント場のある山頂付近はマイナス20度ぐらいになるらしいです。
マイナス20度というのもこれまで経験したことがない寒さなので、無事に過ごせるのか少し不安です。



一週間前は東京でも大雪になったので、さぞかし雪が積もっていることだろうと思っていたのですが、
意外にそうでもなく、くるぶしぐらいまでしか雪がありません。

南岸低気圧による降雪だと、奥秩父よりも東京の方が雪がたくさん降るということもあるんでしょうかね。



登山口から2時間ほど歩いて、近丸新道との分岐点に到着。
ちょっとした広場になっているので、ここで小休止。



徳ちゃん新道はわりと緩やかな登りだったので快調に登ってこれましたが、
分岐点から先は急登が延々と続き、足を止めて息を整える回数が多くなります。

ところどころ大きな段差もあり、テント泊の重い荷物が辛く感じます。
雪の下のツルツルの氷が露出しているところが多くなってきたので、標高2100m付近でアイゼンを装着しました。



近丸新道の分岐のところから2時間半ほど登って、破風山への分岐に到着。
この時点でスタートから5時間ほど登りっぱなしで、ふくらはぎが既に限界を迎えていました。
もう少しで木賊山で、そこからは下りになるので、もう少し頑張ります。

ここまで登ってくる途中で2組のパーティをすれ違いましたが、2組とも甲武信ヶ岳までは行かずに引き返したらしく、
「木賊山から先は歩かれていないみたいで、大変かもしれないですよ。」と言われ、期待と不安が入り混じります。



木賊山(とくさやま)に到着。



スタートから木賊山までは、ずっとくるぶし辺りまでしか雪がありませんでしたが、
木賊山の北側の道の下り始めのところは雪がかなり深くなってました。

うっすらと足跡のようなものはありましたが、
足跡の上に足を置いても一歩ごとに太腿の辺りまで雪に埋まってしまい、進むのにかなり時間がかかりました。

少し進んで樹林帯を抜けるとまた雪は少なくなり、とうとう甲武信ヶ岳が見えてきました。



16時50分に甲武信小屋に到着し、テントを設営。
当初の予定では1日目に山頂まで行って、2日目は下りるだけのつもりでしたが、
予定より遅くなってしまい日も暮れ始めていたので、今日はここまでにすることにしました。

テルモスのお湯でカップラーメンを作りましたが、どういうわけか食欲がなく、全然食べられません。
行動食もほとんど食べていなかったので、無理して食べないといけないと思い、がんばって食べましたが、
気分が悪くなって少し吐いてしまいました。

2年前に穂高を縦走したときも、先月の赤岳主稜のときもそうでしたが、疲れすぎるといつも吐き気がします。
考えてみれば、そうなるときはいつも何も飲まずに行動しているときなので、
高度障害などの影響もあるのかもしれません。

カップラーメンを食べて少し休んでから水作りを始めましたが、
火を点けようと思ってマッチを擦っても、全く火が出ずに湿気た線香花火のように燃え尽きてしまい、
何本擦っても火が点かずにちょっと焦りました。
山登りを始めたときに買ったマッチだったので、買ってから6年ぐらい経っていたマッチですが、
マッチに使用期限ってあるんでしょうか。
出発前にライターが点くかどうかはテストして、ライターがすっかり錆びてしまっていたのでマッチを持ってきたのですが、
マッチが使えるかのテストはしていませんでした。

火が使えないとなると水も作れず、明日の朝食も冷たいものしか食べられないことになります。
これはヤバイと思いましたが、バーナーの点火装置で普通に火を点けられたので、何とか助かりました。

その後は順調に雪を溶かして水を作っていましたが、途中から火がだんだん弱くなってしまい、ついに消えてしまいました。
それからどうしても火が点かなくなってしまい、ちゃんとイワタニの厳冬期用のウルトラガスなのに何でだろうと思いましたが、
ガス缶をしばらく寝袋の中に入れて暖めたら、再び火が点くようになりました。

今までの冬山ではこういうことはありませんでしたが、やっぱり今回が今までよりも寒いということなんでしょう。
何事も経験ですね。

その後は特に問題なく、明日の朝食で使う分の水と、携行する分のお湯を用意して、21時頃に就寝。
冬山で寝るときに、いつも足先だけ冷えを感じることが多いので、今回は足の裏にカイロを貼ってみたところ、
暖かくてぐっすりとよく眠れました。
 


そして翌日は朝5時に起床。
マイナス10度まで計れる腕時計で計測不能になっていたので、テントの中でもマイナス10度以下まで下がっていたようです。

この日、山頂まで行くかどうか、実は結構悩みました。
当初の予定では1日目に登頂して2日目はすぐ下山して、11時のバスで帰るつもりでしたが、
11時のバスに乗れないとなると、その次のバスが15時まで無いのです。
そして昨日の木賊山からの下りのラッセル。あのラッセルがかなり大変だったので、
甲武信ヶ岳への登りがもしあんな感じだったらかなり大変だろうなと思い、ちょっと弱気になっていました。

しかし、夜通し吹いていた風も朝にはすっかり止み、朝日が出て鳥の声なんかが聞こえてくると、
せっかくこんな良い天気に恵まれたのに、登らないで帰るなんて勿体無いという気持ちになってきました。
一晩眠ったら食欲もすっかり回復し、朝食はたっぷり食べられて体調もすっかり万全。
外に出てテントを撤収してみると、心配だったマイナス20度という寒さも意外と平気で、全然行けそうです。

そんなわけで、僕の中では色々な葛藤がありましたが、覚悟を決めて山頂まで行くことにしました。

ザックを甲武信小屋にデポして、空身で山頂まで行きます。
心配していたラッセルもほとんどなく、ちょっとだけ雪が深いところで膝まで埋まるところもありましたが、
昨日と違って空身なので余裕で登れました。



そして山頂に到着。



西の方に続く奥秩父主脈の先には金峰山が見えます。
そしてその奥には南アルプスの山々も見えます。
左の方には真っ白な北岳、右には甲斐駒と鋸山。

今の自分が一人で行くには、奥秩父や八ヶ岳の一般道ぐらいしか行けませんが、
冬のアルプスにもいつか行ってみたいものです。



山頂からの景色をひとしきり楽しんだ後は、6時間かけて登ってきた分の、長い下山の始まりです。
自分でつけてきたトレースを辿って下ります。



甲武信ヶ岳からの下りでは富士山の眺めが最高です。



木賊山への登り返しはやっぱり雪が深くて大変です。
今回は全体的に予想していたより雪が少なく、念のために持ってきていたワカンを着けることはありませんでしたが、
この部分だけはすごい雪でした。



下り始めて4時間、歩けども歩けども登山口に着きません。
長時間の下りで両足の親指の皮がすごく痛いです。



13時ちょうどに登山口に到着。
山頂から下り始めたのが8時46分だったので、実に4時間14分の下りでした。

帰りのバスの時間まで2時間ほどあるので、することもなくてのんびりと沢の写真を撮ります。
おもしろい形の氷です。



川面の一部を覆うように氷が出来ていて、どうしてこういう風に氷が出来るのか不思議です。



バス停のところに自販機があったのを覚えていたので、
バス停まで着いたらジュースを買って一気に飲むのを楽しみにしながら歩いていたのですが、まさかの冬期販売休止。

バスが来るまで2時間ただ待つのも辛いので、何かお店はないかと探してみたら、
近くに「西沢渓谷蒟蒻館」というお店があるようなので、そこに行ってみることにしました。



蒟蒻の品揃えは凄まじく豊富なようです。
クタクタでハラペコなので、何でもいいから蒟蒻以外のカロリーのあるものが欲しいです。



入ってみたら蕎麦やうどんもあったので、蕎麦と蒟蒻の定食を注文しました。
蕎麦とおにぎり以外は全て蒟蒻でしたが、刺身蒟蒻はなかなか美味でした。

ここで15時ぐらいまでのんびり過ごして、バスに乗って帰宅。
バスの本数が少ないせいで当初の予定より帰宅時間が大分遅くなりましたが、やっぱり山頂まで行ってよかったです。


今回のルート


1日目
10:16 西沢渓谷入口バス停
↓ 24分
10:40〜11:00 徳ちゃん新道登山口
↓ 2時間9分
13:09〜13:18 徳ちゃん新道分岐
↓ 2時間54分
16:12 木賊山
↓ 39分
16:51 甲武信小屋

2日目
8:06 甲武信小屋
↓ 30分
8:36〜8:46 甲武信ヶ岳
↓ 1時間2分
9:48 木賊山
↓ 1時間32分
11:20〜11:40 徳ちゃん新道分岐
↓ 1時間20分
13:00〜13:14 徳ちゃん新道登山口
↓ 18分
13:32 西沢渓谷入口バス停