南八ヶ岳縦走


2016年5月30日(月)~5月31日(火)

そろそろ高い山でも雪が融け始めて、縦走が気持ちいい季節になってきたので、
いつかやりたいと思っていた南八ヶ岳の縦走をやることにしました。

こないだの冬に、雪山を登るにあたって、どの山にしようか随分考えましたが、
そのときに南八ヶ岳の主稜線の縦走も候補に挙がっていました。

しかし、横岳の辺りはなかなか危険とも聞いているし、
無雪期にも歩いていない状態でいきなり積雪期に行くのは危ないと思い、
結局、冬山初心者向けと言われている天狗岳に行きました。

そんなわけで、今回は冬山の為の偵察も兼ねて、赤岳から硫黄岳までの稜線を歩くことにしました。
せっかくなので、ついでに権現岳~赤岳の間のキレットも歩きたいと思い、
八ヶ岳の最南端の編笠山から、南八ヶ岳の北端の硫黄岳まで縦走することにします。

テントを担いで1泊2日の行程で行きますが、今回のテーマはズバリ「ライト&ファスト」。
持っている道具の中でも比較的軽くて小さいものを選び、無くてもなんとかなるものは極力荷物から省いて、
テント泊の装備を38リットルのザックに納めることができました。
荷物を詰めた後でザックの重さを量ったら、水と食料抜きで約7kg。
水は2リットル持っていったので、最終的な重量は10kg程度になったと思います。
今までテント泊のときは60リットル以上のザックで15kg以上の重さを担いでいたので、
大幅な軽量化・コンパクト化に成功しました。

上の写真は今回持って行く食料。
行動食にカルビーのフルグラを500mlのボトルにいっぱいと、
ようかんと梅干とピーナッツと、ウイダーのプロテインバー。
1日目の夕飯はラーメンと乾燥ワカメで、2日目の朝食はジップロックに入ったカップヌードルご飯。
あとはおかずにうずらの卵の燻製と、イワシとサンマの缶詰。
不足しがちなビタミン類はサプリメントで摂ります。



朝9時頃に小淵沢の駅に到着して、タクシーで登山口の観音平へ。
八ヶ岳は中央線の特急あずさで行けるので、移動が快適で良いです。

今日の天気は生憎の雨。
中止にしようかちょっと悩みましたが、午後には雨は止むという予報だったのと、
2日目は晴れそうだったので、頑張って登ることにしました。



出発してしばらくは静かでなだらかな樹林帯。
平日でしかも雨ということもあり、他に人は誰もいません。

最初はレインウェアを着ないでいいぐらいの小雨でしたが、
出発してすぐに結構な本降りになってきたので、上下ともレインウェアを着ました。



出発から40分で雲海という展望台に到着。
天候に恵まれれば雲海越しに富士山が見れるらしいですが、真っ白で何も見えませんでした。



雲海を過ぎた辺りから、登山道に大きな石が多くなってきます。



さらに40分ほど歩いて、押手川という分岐点に到着。
ここから編笠山の山頂への道と青年小屋への道に分かれます。



押手川を過ぎた辺りから、傾斜もそれまでよりきつくなってきて、
登山道の石もどんどんゴロゴロになってきます。

ここで今日初めて人とすれ違いました。



いよいよ森林限界を突破。
毎回ワクワクする瞬間です。



そして編笠山の山頂に到着。



山頂は見渡す限り石がゴロゴロ。
広々としていて、天気が良かったら気持ち良さそうなところです。

今日は眺望は全くなく、風も強くなってきてのんびりする気分にはなれないので、
写真だけ撮ってすぐに次の目的地を目指します。



編笠山から下り始めて30分ぐらいで、霧の向こうに青年小屋が見えてきました。
この辺りもずっと大きな石がゴロゴロしていて歩きづらいです。



青年小屋を通過してさらに30分ほど登って、のろし場というピークに到着。
青年小屋から権現岳の間には、のろし場、西ギボシ、東ギボシというピークがあります。

ちなみにこの場所は、戦国時代に狼煙を上げる場所として使われていたそうです。



のろし場を過ぎると、すぐに霧の向こうに見えてくる威圧的な山の影。
おそらくこれがギボシです。

西ギボシ、東ギボシのところは、ピークは通らずに南側の斜面をトラバースして通過します。



今回のルートの核心部はキレットの登りの部分だと思っていたので、
それ以外の部分はあまり調べずに来てしまったのですが、
このギボシというところが結構激しい岩場で、なかなかの難所でした。



今回は冬山の為の偵察でもあるので、難しいポイントを見ると、
「アイゼンを着けた状態でここを下れるかな…」ということを考えるのですが、
ここは雪があってアイゼンを着けた状態だったらなかなか難しそうです。



無雪期であれば岩場の通過には大分自信がついてきましたが、
よくよく考えたら積雪期のアイゼンを着けた状態での岩場の経験は無いに等しいので、
冬に岩稜を通るならアイゼンでの岩トレもしておきたいところですね。



一番難しかったのはこの部分。
ホールドは豊富ですが垂直に近いです。



無事にギボシを通過して、権現小屋に到着。



権現小屋を過ぎると、赤岳への道と三ツ頭への道の分岐があり、
権現岳の山頂は、三ツ頭方面に少し歩いたところの岩の上にあります。



そしていよいよ、赤岳へのキレットに突入。
まずは長いハシゴの下りから始まります。

天気予報に反して風雨は激しさを増すばかりで、
横殴りの雨を受けながらハシゴを降りるのはなかなか辛かったです。

ちなみにキレットというのは、切れ込みが深くてV字状になっているような鞍部のことで、
意外なことに外国の言葉ではなく、漢字では「切戸」と書きます。
主に長野県の山で使われる言葉だそうで、富山の山では同じような地形を「窓」と言うそうです。



権現岳からキレットの最鞍部までには、旭岳、ツルネという2つのピークを越えていきます。
旭岳の辺りはなかなか激しい岩場になっています。



ハシゴを降りてから1時間30分ほどで、本日の宿泊地のキレット小屋に到着。

なんとキレット小屋は毎年7月頃から営業開始しているようで、
今の時期はまだ開いていませんでした。

水場もまだ整備されていませんでしたが、
沢のなるべく上の方で水が流れ落ちているところを探して、なんとか水を汲めました。



テント場には僕の他には誰も居なかったので、一番良い場所にテントを張って、
ようやく一息つくことができました。

出発してから約7時間、ずっと雨が降っていたので、ほとんど休憩もとらずに歩いていましたが、
荷物が軽かったおかげで疲れはそれほどでもありません。

今日の夕食はラーメンと缶詰とうずらの卵。
ストーブは軽量化の為にガスではなくアルコールストーブにしてみました。

外は雨が降っているのでテント内で調理をしようと思い、
ちょうどよく平らな石があったのでアルコールストーブの下に敷いて火を点けてみましたが、
しばらくすると目と喉が焼けるように痛みだし、慌ててテントの入り口を開けて顔だけ外に出しました。

今まで知らなかったのですが、どうやらアルコールストーブはテント内で使うとダメみたいです。
ベンチレーションは全開にしていたのですが、何やら有害な気体がテント内に充満してしまって、どうにもダメでした。
燃料を軽くできて良いと思ったのですが、途中で火を消せないし、火力の調節もできないので、
やっぱりガスストーブの方が断然扱いやすいですね。

2日目はなるべく早く歩き始めたいので、19時には就寝。
結局夜になっても雨は止まず、フライシートに雨が叩きつけられるバチバチという音で何度も目を覚ましました。



そして2日目。
雨は止んでいましたが、風が強く、テントが風に煽られるバタバタという音で目覚めました。

3時少し前に起きて、それから朝食のカップヌードルご飯を作って食べました。
今回、初めてカップヌードルご飯を食べましたが、少ない水で調理できるのでなかなか便利です。
ただし、コッフェルがベトベトに汚れてしまうのが難点ですね。

朝食の後で水場に水を汲みに行ったら、昨夜の大雨で沢の水が少し濁っていました。
そのまま飲むのは嫌な感じだったので、水は赤岳の山頂にある小屋で買うことにして、
とりあえず手持ちの500mlで山頂まで頑張ることにしました。

こないだ北横岳に行ったときもそうでしたが、テント泊の場合でも、
小屋が開いていないと、水が手に入らなくて結局苦労します。
水場の情報だけは事前にしっかり調べておかないとダメですね。



風が強くてテントの撤収にてこずりましたが、5時頃に撤収を終えて、5時10分にキレット小屋を出発。

今日の天候はご覧の通りの快晴。
2日目は必ず晴れると信じていたので、1日目は悪天候でもなんとか頑張れました。



南側から見る阿弥陀岳・中岳・赤岳。
赤岳は北側から見ると端正な山容ですが、南側から見るとギザギザしていて大分印象が違います。



ちょうど写真の真ん中から上の方にかけて、これから登る核心部のルートが見えています。
こうして見るとなかなかすごいルートです。



そしてついにキレットの核心部、赤岳の手前のルンゼまで来ました。



左の方を見ると、阿弥陀岳がよく見えます。
阿弥陀岳へは3年前に会社の登山部メンバーで登っていますが、
こうして見ると阿弥陀岳の登山道もなかなかの急傾斜で、よくあんなところみんなで登ったなぁと思います。



ルンゼに入ってから20分ほど登りましたが、まだまだ続いています。
これだけ長く続く岩場の登りは初めてですが、グイグイ登っている感じがして、すごく楽しいです。

このルートが八ヶ岳の一般登山道では最難ルートと聞いていましたが、
思っていたよりも傾斜は緩く、それほど難しさは感じませんでした。
天候が悪かったせいか、昨日のギボシの通過の方が難しかったように思います。



ようやくルンゼを登りきりました。
登りきったところからキレットを見下ろすとこんな感じです。
写真の中央の、稜線から少し左に見えている白い点がキレット小屋です。



ここまでずっと赤岳に太陽を遮られていたので、ここに来てようやく陽光を浴びられました。
東の方を見ると、奥秩父の山々が雲海から顔を出しています。



赤岳の山頂はもう少し。
ルンゼを越えてからは難しいところはほとんどありません。



ついに山頂が見えてきました。



山頂の手前のところで文三郎道からのルートと合流します。
左下の方に、文三郎道の方から登ってくる人が見えます。



振り返ると、昨日から登ってきたルートが一望できます。
真ん中の奥の方にひょっこり頭だけ出しているのが編笠山、
それから手前に向かってギボシ、権現岳、旭岳、ツルネと続きます。



キレット小屋を出発してから2時間、朝7時に赤岳の頂上に到着。
文三郎道から登ってきた2人組と山頂で一緒になったので、写真を撮ってもらいました。

赤岳の山頂からは、360度広がる最高の眺望が楽しめます。
こういうところに来ると、360度撮影のできるカメラが欲しくなりますね。
ただその為だけに買うのもバカらしいので、誰か持っていたら山に行くときだけ貸してほしいです。



これまで見えなかった北側の景色も一気に開けました。

今日これから歩く横岳、硫黄岳もよく見えます。
その先には冬に行った天狗岳の2つの山頂も見えます。
北横岳はどれだか分かりませんが、一番奥に八ヶ岳最北端の蓼科山も見えます。

横岳はギザギザしていてどこが山頂だかよく分かりません。



そしてやってきました横岳への登り。
写真の真ん中辺りに、山頂で一緒になった黄色いジャケットの人が登っているのが見えます。



横岳を少し登ったところから見る赤岳。
この辺りから見る赤岳はすごく綺麗です。



横岳への登りはそこそこ激しい岩場の連続で、アスレチックみたいで楽しいです。



山頂標識が見えてきました。
赤岳の方から見て、一番奥のギザギザの部分のところに山頂標識があります。



赤岳から1時間半で横岳の山頂に到着。



横岳から硫黄岳方面へは、山頂からの下りで一箇所だけ難しい岩場がありますが、
その岩場を過ぎれば、これまでとは打って変わって、なだらかで気持ちの良い道が続きます。

赤岳から横岳への登りはなかなか難しかったので、積雪期に通るなら、やっぱり赤岳の方から縦走する方がよさそうです。



硫黄岳山荘を過ぎて、硫黄岳への登りが始まります。
道が平らで広いので、濃霧の際に道に迷わないように、大きなケルンが山頂まで続いています。



硫黄岳の爆裂火口跡。

噴火で爆発してこういう形になったそうです。



横岳から1時間で硫黄岳の山頂に到着。
今回の縦走はここまでで終わりにして、後は美濃戸に下ります。



硫黄岳から赤岩の頭への下りも、下り始めに一箇所だけ難しい岩場がありますが、
そこだけ過ぎればなだらかです。



赤岩の頭から見る赤岳・横岳・硫黄岳。
本当に楽しい稜線でした。



赤岩の頭から下り始めて1時間ほどで赤岳鉱泉に到着。



赤岳鉱泉から見る横岳もかっこいいです。
左の方に大きく見えているのは大同心ですかね。
ここからだったら取り付きが楽そうです。

手前の白いのは、冬期に作られるアイスキャンデーの残骸のようです。

ちょっと小屋の中も見てみましたが、今日の夕飯はステーキとか書いてあって、うらやましいと思いました。
個室もあって快適そうな小屋なので、いつか泊まってみたいです。



赤岳鉱泉からは北沢ルートを通って美濃戸まで行きます。
沢を何度も渡り返すコースで、沢沿いにルートが作られていて気持ちよく歩けます。



最後の林道歩きが長くて、そこでちょっと疲れてしまいましたが、
無事に13時40分に美濃戸口の八ヶ岳山荘に到着。

八ヶ岳山荘でお風呂に入って、そこから茅野駅までタクシーを呼ぼうと思ったら、
風呂場で一緒になったおじいさんが一緒にタクシーに乗せてくれて、
5,000円ほどのタクシー代が浮きました。
おじいさん本当にありがとう!


今回のルート

1日目
9:28 観音平

12:08 編笠山

14:26 権現岳

16:20 キレット小屋

2日目
5:10 キレット小屋

7:05~7:30 赤岳

8:57 横岳

10:05 硫黄岳

11:23~11:45 赤岳鉱泉

13:40 八ヶ岳山荘

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